[作品について]
アクリル絵の具を用い、混ざり合う途中の色彩や偶発的な表情、感覚的なタッチを取り入れることで、「感覚に訴える絵画」を意識して制作している。
私のなかを流れていく記憶の断片を、そのまま留めようとする試みである「Mind Record」シリーズ。
カラフルな色使いやモデリングペーストによる豊かなテクスチャーを特徴とした「The letter from stars」や「Object」シリーズ。
そして“人間の境界線”をテーマに、さまざまな人の窓を描いた「Fixed Window」シリーズなど、複数のスタイルを展開している。
Statement
私は日記をつけるときに、その日あった出来事ではなく、その日の「気持ち」を書いてしまいます。そのため、日記には似たような言葉が繰り返し並んでいます。
「何をしたか」「誰と居たか」が抜け落ちているので、あとから言葉の断片を手がかりに、その日の情景を少しずつ手繰り寄せることになります。肝心な、日記としての役割をまるで果たしていないのです。
私はそんな“役立たずの日記”を、同じように書いては読み返し、その日の出来事を推測します。文字は時に力強く、時に弱々しく、殴り書きだったり、滲んでいたり。ときには星やハートマークが添えられていて──
その線や形に滲み出た想いが、ゆっくりと懐かしく思い起こされるのでした。
人は多面的で、
残酷と慈愛を、純粋と狡猾を、寛大と狭量を、尺度が変化する物差しごと、一緒くたに抱えて生きています。
私は、その美しい歪みを、ときに強く握りしめるようにして、
揺れ動き、留まることのない「瞬間の痕迹」を記録しようとしている。
日記の揺れる文字に沁み出た想いを、絵の具の色や形、マチエールで置き換えるように描き始めました。色同士が混ざり合い美しく呼応しはじめたとき、
言葉では伝えきれない何かが、そっと伝わるような気がするのです。
Profile
清水 佳代子 Kayoco shimizu
宮城県出身、栃木県在住。
2008年 第25回FUKUIサムホール美術展 入選。
2009年 第26回FUKUIサムホール美術展 入選。
2009年 第12回リキテックスビエンナーレ 特別賞受賞(スパイラルホール/青山)
2013年 TOKYO DESIGNERS WEEK 2013 (明治 神宮/TDW ART FAIR ブース内)。
2014年 ART POINT Selection Ⅲ 画廊選抜作家グループ展 (GALLERY ART POINT /銀座)。
2015年 New year Selection(GALLERY ART POINT/銀座)
2016年 清水佳代子展 [ 個展](壌 / 西麻布)
2018年 ATCアート大賞展 佳作入選 (The Artcomplex Center of TOKYO)
2018年 清須市第9回はるひトリエンナーレ入選。 (清須市はるひ美術館/愛知)
2019年 個展「メモワール-Memoirs-」JINEN GALLERY(小伝馬町/東京)
2020年 個展 (巡回展)「メモワール-Memoirs-」aギャラリー(川越/埼玉)
2024年グループ展『パスカルの蝶たち』 (建仁寺両足院/京都祇園)